実業団チームのあり方

先日は全日本実業団ハーフマラソンがありました。NTNの北岡選手、スズキの北川選手といった中部地区の新人が1時間2分台でした。順調に力が付いてきているようで、今後が期待できそうです。
本題ですが、こういうところで「実業団」という言葉を聞くと、考えることがあります。「実業団なんだから厳しく」とか「実業団なんだから大学生、高校生に負けてはいけない」といいますが、この場合の実業団ってどういう意味でしょう。「プロ」という意味なのでしょうか?
個人的に思うところでは、いろんな形の実業団があっていいと思います。コニカミノルタのように国際大会代表選手を育てることを目標とするチームが理想でしょうが、それだけの強化ができるチームばかりとは限りません。注目されていた重川材木店のように大工職人を目指しながらニューイヤー駅伝を目指すチームといった具合にそれぞれの目標があってよいと思います。
自分が所属したチームは当初、仕事と両立しながら県レベルの駅伝で活躍を目指すようなチームでした。レベル的にはクラブチームと大差ありません。仕事は交替勤務の選手あり、通常勤務で残業もありです。合宿も年1,2回ですし、手当ての支給もありません。その代わり13分台の選手なんかいませんし、15分台の選手だっています。

こういったチームが地道に力をつけ、全国大会で活躍するといった話も聞きます。それはもちろん素晴らしい話です。しかし、個人的にはこういった形のまま地道に活動を続けるチームがあってもよいと思います。
仕事は一般社員と同じようにこなす。実力は県大会レベルで、強い大学生や高校生に負ける。会社からの援助は少なく、会社の人たちには県大会レベルの活躍で喜んでもらうようなチーム。ほとんどプロのような実業団チームでは受け入れてもらえないようなレベルの選手でも競技を続けられるチーム。こんなチームだって会社の人や地域の人に喜んでもらえれば、存在する意義はあると思います。

陸上界にとっては選手の強化にはつながらないでしょうが、競技人口の増加や受け皿の拡大にはつながります。もしこういったチームの中から、もっと強くなりたいという選手がいたら、それができる環境のチームへ快く送り出してやればよいのだと思います。
しかし、「実業団」と名前が付くと、周囲も結果を期待しますし、それを意識する選手もいます。会社の規模が大きいとそれはなおさら強くなります。そこが難しいところだと思います。
もちろん、チームの方向性を変え、さらに上のレベルを目指していくのも、自然な流れです。
しかし、どんなチームでも同じでしょうが、ある目標を達成した時点で、今後どういった方向を目指すのか、方向性を明確に、チーム内で意思統一をしていくことが必要です。県大会で優勝を目標としていたチームがそれを達成した場合、次はどんな方向性を目指すのか。連覇を目指していくのか。それとも今度は全国大会出場を目指していくのか。しかし、全国大会を目指すとなると競技に対する意識を大きく変えることになり、チームの方向性と違う意思を持つ選手・スタッフはチームを離れることになります。チームから仲間が去ることになるのはつらいことですが、チームとは目標を持った集まりですから、仕方がないことだと思います。