指導者の引退後のキャリア

スポーツ選手全体の問題として、引退後のキャリアがあります。プロ選手は当然としても、企業の所属する実業団選手でも苦労します。終身雇用が崩壊し、真面目に業務に取り組めば定年まで安泰という時代は終わりました。若いころにスポーツに没頭した分、スキルが身に付かなかった場合、引退後の会社でのキャリアで苦労することになります。フルタイム勤務の企業でも時間外労働、長期出張なんでもありの社員とはどうしても差がついてしまいます。
この問題は指導者ではもっと深刻になります。ある名門高校の先生が講演会で「30歳までは陸上で頑張る、その後は仕事で頑張る」といったことをおっしゃっていました。しかし、指導者は30歳以降が活躍の場となります。
所属する企業の運動部が活動を休止した場合、他社から声がかかるような指導者であれば、そのままスポーツを生業としていくことができます。しかし活動の終了、あるいは新任者への交替で退いた場合、会社に残り業務に専念することになる指導者も多くいるはずです。
こういったことを考えると、指導者を退いた後のキャリアを考えながら活動している指導者が多いのではないかと思います。例えば、選手への健康管理、メンタルヘルスを徹底して行い、指導者を退いた後は、会社で社員の健康管理、メンタルヘルスの業務につく、などです。こういったことは、指導者単独の取り組みだけでは難しいと思います。会社が真剣に指導者のキャリアを考えてくれないと、指導者をやる人自体がいなくなってしまうのではないでしょうか。
退いてからのキャリアを考えてということではないでしょうが、トヨタ紡織の亀鷹監督の、自ら合宿向けの宿泊施設(スポーツインオラ)を運営するという試みも面白いです。選手の心理が考えられていると好評だそうです。