駅伝の選手選考

コーチ時代最も苦しんだのが駅伝の選手選考です。どの区間に誰を起用するか非常に難しい問題です。
本人が走りたい区間と監督・コーチが走って欲しい区間が違う、あるいは外された選手の不満が解消できない、といった問題があります。
よく「選考会を行えば、文句なくすっきり決められる」と言われます。しかし、自分は選考会で選手を決定することに疑問を持っていました。選手の調子は変わっていきます。そのため、選考会は大会に時期が近いほうがよいです。しかし、あまり近い時期に選考会を行うと疲労が残っていしまいますから、二週間前が限度かと思います。選手になれるかどうかわからないメンバーは当然選考会に合わせて調子を合わせてきますが、さらに大会にもう一度調子を合わせるのが大変になります。精神的にも選手に選ばれたことで満足してしまって本番でよい結果が出ないこともあります。
かつての所属チームの選手に「選手で話し合って決めたい」ということを言われました。母校(駅伝の名門校)でその方法だったからだそうです。自分はこれも難しいと思います。自分も大学時代に監督に提案したことがありますが、選手間で話し合って決めたら外れた選手のショックが大きいからという理由で却下されました。確かに同じ選手に「お前は大会で弱いから今度は外れてくれ」と言われたらショックですね。高校生であれば、学年間での力の差がありますし、そういう伝統がずっとあれば可能かもしれません。しかし、急にやれと言われてもできるものではありません。
やりたいとは思っていたが、できなかったのがポイント制です。5000m、10000mのベスト記録、過去の駅伝レースの結果、練習内容をポイント化してポイント上位の選手を選考するという方法です。若干方法は違いますが、似た方法を亜細亜大学が使ったそうです。
例えば、5000mの過去1年間の記録が15分00秒なら5点、14分50秒なら6点などで10秒ごとに1点ずつ追加していきます。10000mでも同じようように採点し、点数が高い方を使用します。また駅伝では同じ駅伝の前年の結果をポイント化します。後は合宿のメニューをどれくらいこなせたかなどをポイント化し、駅伝1ヶ月前に公表します。後は駅伝までのポイント練習などをポイント化して、選手選考するというものです。
できなかった理由は大会前のポイント練習をどう評価するかが難しかったからです。大会前のポイント練習を仕事で欠席したとすると、それをどう評価するかです。理由はなんであれ、練習に来れなかったのだから0と評価するのか。それでは選手の反発を招きそうです。なら平均点をつけるのか。それだと体調が悪いながらも練習をこなした選手の反発を招きそうです。でもこれは手間がかかりますし、ポイントが高い選手が本当に実力があるのかも疑問です。

よく考えれば受験でも同じようなことが言われます。学力試験だけでは画一的な知識しか身に付かないと言いますし、総合的な評価をしようとすればわかりにくいと言われます。
結局、監督と選手がきちんと信頼関係が築けて、「監督に外されたのなら仕方がない」と思えるようなチームにしていくしかないのだと思います。