意識改革の難しさ

自分がかつてコーチをしていたとき、最初に着手したことが「意識改革」でした。
フルタイム勤務とはいえ、会社から合宿費・遠征費や靴の支給があるわけです。会社としては福利厚生として行っているわけではないので、それに応えなければいけない。結果を出すことが求められます。そういった意識を持たせることを始めました。
選手には「会社というのは100万円で物を作って120万円で売って20万円の利益を得るという世界である。だから与えられた費用以上の活躍をすることが必要」と言ってきましたが、なかなか理解されませんでした。会社に費用を出してもらいながら同好会感覚で陸上をやっていけるという甘い考えが消えませんでした。
だから、選抜合宿なんかをやると選手の中から不満が出たりしました。同好会の感覚で、みんな仲良く、それなりに強くというのが一番楽しいですが、さらに上のレベルを目指そうとすると選抜合宿のような形も必要となってきます。
自分でもそうなのでしょうが、既得権を手放すというのはつらいものでしょう。でもそれをしなければ、周囲の理解は得られません。「彼らにならお金を出せば、それ以上の効果を出してくれる」と思わせなければ、会社から費用を出してもらえないでしょう。
そういえば、大学では監督が変わってから4〜5年でチームが大きく変わってくることが多いです。当たり前のことですが、監督が4年間ずっと見た選手が中心になる、あるいは監督が勧誘した選手が中心になることが要因です。かつて2003年に全日本女子実業団駅伝で優勝した第一生命の山下佐知子監督の談話の中で強くなった要因に「選手もスタッフも全て自分が連れて来た人になった」という点を挙げていました。