辞めること、辞めさせることの難しさ

実業団は辞めることも辞めさせることも難しいです。
高校生は3年間、大学生は4年間という在学期間がある。在学期間が終われば自然と部を去ることになります。
しかし、実業団はそうではありません。卒業という決められた区切りがないので、選手が自分で辞めるか、辞めさせられるかしかないのです。
「辞めること」は難しいです。今まで継続してきたことを諦める決断はしにくいものです。長距離選手の持ち味である我慢強さ、粘り強さと矛盾するからです。「いつまでにこの記録を出せなければ」という区切りを自分で決めるしかないでしょう。
「辞めさせること」はもっと難しいのです。選手を採用する際、出身高校・大学の指導者にお願いして送り出してもらっている場合、選手を辞めさせることにより、出身高校・大学の指導者との関係が悪くなる可能性があるからです。高校・大学の指導者に「お願いされて送り出したのに辞めさせられた」とか、「才能のある選手を送り出したのに、指導者が悪くて潰された」と思われたら、もうその高校・大学から選手を送り出してもらえないでしょう。
そういう点からも高校・大学の指導者にお願いして選手を送り出してもらうより、選手自身の希望を大事にして採用したほうがよいように思います。